イナズマイレブン オリオンの刻印 20話「新たなる旅立ちの宴」感想
西蔭の参謀クビ問題がひとまず丸く収まったようです。
このアニメを作った人たちはあんなので丸く収まったと思っているようです。
まあ…一星が(悪気なく結果的に)西蔭の立場を奪う絡み方をしだした時点で、
丸く収めるなら西蔭が全面的に妥協するオチにするしかないだろうなとは予想していました。
そこに至る過程がどう描かれたとしても、完全に気持ちのいい結末にはならないだろうという諦めはありました。
その時点で期待のハードルはもうマントルくらいまで下げていました。
それでも16話で西蔭を「かわいそう」だと解釈もできるように描写していた事から、
西蔭が何らかの葛藤を乗り越えたうえで一星の存在を受け入れるというある程度の
人間ドラマは見せてくれるのかな、どれどれ見てやろうじゃねーかという気持ちでいました。
既に納得してないけど半分くらいは納得できるかもっていう期待のハードルは置いていました。マントルに。
そんな心持ちで迎えた今回。イナオリ20話くんが見せてくれた跳躍……それは……
地核を跳んできやがった………
期待のハードルを地中深くに埋めてる時点で狂ってるのに…
まさかマントルまで下回って来るとは……
どうやら西蔭には葛藤する事すら許されなかったようです。
う~~ん……。別に西蔭と一星が仲良くなるのはいい事だと思いますよ?
一星自身は野坂に期待された通り自分の才能を一生懸命活かしてるだけで、何も悪くないですし…。
私だって、西蔭に一星を敵視してほしいとか追い出してほしいって思っていたわけじゃないし、
西蔭は激しく嫉妬する程の自惚れはもう克服したものだと思っていましたし…。
ただ、激しい感情は見せなくても心の中で傷つく資格ぐらいはあるだろうと、あるべきだと思っていました。
これさぁ…西蔭の一星に対する心情のフォロー、
一星が優秀な分析家として認められるフォローにはなっていても、
西蔭の野坂に尽くしたい気持ちに対するフォローには全くなってないんですよ…。
西蔭が野坂の好物を知って持って行くのは、参謀としての分析能力を示すとかそういう事じゃないでしょ?
野坂さんの事が好きだからじゃん??喜んでほしいからじゃん??
友人にプレゼントを贈る時、他の友人が自分と全く同じものを贈ろうとしていたら
じゃあ自分は渡さなくてもいいか、とはならなくないですか…??自分で渡したいものじゃないんですか?
それで相手の喜ぶ顔が見られるから、渡す側も嬉しくなるものじゃないんですか…??
西蔭が野坂を慕う気持ちは、本当はとっくに参謀とか従者としてとは関係ない場所にあるはずなんですよ。
野坂悠馬という人間をただの友人として「好き」だという気持ちがあるんです。
16話でジュースを野坂の分だけでなく自分の分も持って行ったのなんてその何よりの証です。
あれは「野坂さんと一緒にジュースを飲んで過ごしたい」と思っての行動なわけで、
そんなの参謀としてお支えするとか役に立つ事とはもはや全然関係ないじゃないですか。
だから西蔭は一星が部屋にいようと構わず入って良かったんですよ、本当は。
でもそこで西蔭は参謀としての自分の居場所がないと感じると
ただの友人としてジュースを持っていく事すらできなくなってしまって。
それがあの場面の悲しいところだったんです。
だから、本当に西蔭に必要だったフォローとは
「西蔭には野坂の傍に確かな居場所がある」っていう友情面のフォローだったと思うんです…。
「一星が優れた参謀役であると西蔭が認める」事は、
「一星スゲーじゃん!いい奴じゃん!」って一星の仲間としての居場所の確立にしかならなくて、
西蔭が参謀をクビになった問題そのものや西蔭と野坂の友情のフォローには全然ならないわけですよ…。
全然別の問題なわけなんですよ、そこは…。ごっちゃにしちゃダメなんですよ…。
もしかしたら、西蔭が野坂と一星の三人で談笑しながら食事している場面が
友情面のフォローのつもりだったのかもしれない。
16話で恐らく廊下で一人で寂しく二人分のぬるくなったジュースを飲んだであろう西蔭の、
悲劇のアンサーがあれだと言いたいのかもしれない。
でも、それならさぁ……
西蔭が野坂のために皿に取った分も三人で食べる描写までしなきゃダメでしょうよぉ…。
そこまでハッキリやってくれなきゃ、西蔭が皿に取った分が無駄になったと解釈できる余地が生まれてしまうので。
あのスイカジュースと同じように、野坂に渡せないまま終わってしまったと…。
これではまるで、西蔭のもはや参謀としてでもないただ野坂を「好き」という気持ちが
参謀としての完全敗北と共に野坂本人に届かない事が、
正しい事だと言っているようではありませんか……。
いや、もちろん制作陣にそんな胸糞悪い意図がないであろう事はわかりますよ。
でも描写に隙がありすぎてそういう胸糞悪い解釈を否定できる説得力を持ってないところが残念でならないんですよ…。
それに、友情面で見て最悪の極みなのは野坂から西蔭に対するフォローが何にもないまま解決してしまった事です。
野坂さん、あまりにも的確に西蔭のプライドをズタズタにする物言いだったから
てっきり西蔭の心を鍛える(?)つもりなのかと思ってたけど…だとしても鬼畜だろって思ってたけど……
まさか、何も考えてない……????天然でやっていらっしゃる……????
野坂さん……それはあんた……人間としての大切な感情が欠落してるのでは……???
いやまあ、わざとでもわざとじゃなかったとしてもどの道許されんサイコパスの所業だったんだけどねこれ!?
だから参謀スカウトの時点でもう野坂悠馬の良心の存在は諦めるしかなくて期待をマントルに下げてたんだけどね!?
しかし……はぁぁ~……そっか……西蔭の事を想ってやった事ですらなかったわけかぁ~~……。
すごいですねこれ、結局全部勝手に悩んだ西蔭が悪かったみたいじゃないですか。
ずっと慕ってきて自分の友情を知ってくれたはずの野坂にあんな言い方されて、
居場所を失くしたように感じて、それで「寂しい」と口にする事すらなく
一人で勝手に納得して笑って今を受け入れる事が、健全な少年の友情の在り方だとでも言うんでしょうか。
まあ…隷属的な愛も萌えるっちゃ萌えるんですけどねぇ。
『テイルズオブハーツ』のインカローズのクリードへの報われない愛なんか好きでしたし。
クリードはインカローズの事を道具扱いで役に立たなきゃ暴力振るうし、愛しているのは他の女だし、
インカローズの死を気にも留めないけど、でも彼女は恐らく気まぐれに言われた「瞳が美しい」って
言葉を死ぬ瞬間まで大事にしてて、それさえあれば愛してもらえなくても幸せだったわけで…。
しかし…そういう暗い愛が美しく成立するのは悪役キャラで愛の形が倫理にとらわれないからであり……
野坂さんは性格悪くても正義サイドの人間だし…一応これ男子中学生同士の前向きな友情って体をとってるからよ……
アレスまでの野坂だったら西蔭に残酷な仕打ちをしても話の筋が通ったと思いますが、
アレスプログラムを抜けて野坂は人間らしさを取り戻した事になってる今、
無神経な振る舞いをさせてさらにそのままツッコミなしってのはなぁ…。
9話でサッカーのスタイルがダークヒーローみあるままだったのは別に良かったけど、
流石に友人関係は優しくなってほしかったっていうか…。
アレス26話で一度西蔭に対して誠意を見せた文脈がある以上、そこは保ってほしかったっていうか…。
野坂さん…心取り戻したつもりだったけどやっぱり部分的に手遅れで一度欠落した心はもう戻らないんだな…
って悲しみが生まれてしまいますよ…。
あの三人自身が納得してて、今後パッと見円満に健全そうに仲良くやっていったとしても、
いい関係だな、いい話だな、って果たして思えるのかどうか…私は自信がありません。
それに、人間関係上は西蔭と一星は仲良しで対等の舎弟だよ!って感じになったとしても、
アニメの実際の描写と、イレブンライセンスやプレカの他メディア展開、日野社長のインタビューと合わせて、
「西蔭はオワコンで~す!!一星の方がすごいで~す!!これからは一星で~す!!」感が
あまりに露骨すぎて…隠す気もなさすぎて…絶対対等感出せないだろって気がします…。
そこはもう登場人物自身の人間性は関係なくて、クロスメディア作品としての売り方の問題で、
こっちがどんだけ物語自体を好意的に解釈しようとしても見ないフリができない部分でして……。
西蔭にしかできないことなんてなんにもなくて、
野坂にとって西蔭がなくてはならない存在だって示すものが全然なくて、
西蔭なんて別にいてもいなくてもいいんだなって説得力ばかりが増していく…。
まあ…結局イナズマイレブンのシリーズを通して描かれる友情って言ってしまえば「使い捨ての尊さ」である事が結構あるんですよね。
どんだけ主人公チームがいい関係築いてこのチームじゃなきゃダメだよね!!って感じを出しても
次のシリーズになればだいたいのレギュラーがクビになりますからね。コンビに関してもそんなもんですよ。
それでも…それでも野坂と西蔭の関係だけは「使い捨ての尊さ」なんかで終わらせてほしくなかった…。
いやだって…アレスの24話見たらさぁ…
一生隣り合って歩んでほしいって……思うだろ……???普通……????
いやほんとアレス24話素晴らしかったのにな……。
野坂がそれまで自分の後ろを歩いていた西蔭の背中を押して隣を歩かせるっていう、
積み重ねが最高に活きた瞬間だったんだけどなぁ~~……。
野坂の隣を歩けるようになった西蔭は世界で野坂さんと一緒にどんな活躍をするのかと期待してたんだけどなぁ~~…。
まさか野坂の隣に今は別の奴がいて西蔭は再び後ろに甘んじる事になるなんてなぁ~~!!!!
アレスの天秤くんも割と話の筋が通らない事がけっこうあったんだけど、
オリオンの刻印くんはさらに頻繁に話の筋が通らなくなったというか、
アレスで作ったはずの土台をなかったかのようにする事がいくら何でも致命的に多すぎて
もうアレスが初代からのパラレルワールドなようにオリオンもアレスからのパラレルワールドなんじゃねーの?
って思えてきちまったよ……もうどの描写が今後も活かされるのかなかった事にされるかのギャンブルだぜこれは……。
…はっ!!!!でもこの一貫性のなさなら今後西蔭が
「え~んやっぱり寂しいです~!!><」って言い出したり
野坂さんが思い出したように西蔭に優しくしだすワンチャンがあるかも!?!?!?!?
いや……どうかな……ハハハ……。
とりあえず西蔭の用済み感がやばすぎてもう代表離脱の日も近いんじゃないかな…と遠い目をしております。
代表追加メンバーもそろそろ来るみたいですしね…。
いや、ザ・アシュラがあるけど…ほら円堂の技って結構ホイホイ破られるし…もう次の技とか出そうじゃん…??
きっと円堂が多重影分身の術を習得して円堂が増えて、西蔭とオサーム様がいなくても
円堂が別の円堂の手の上でチャクラを練ったりするんですよ……。
はぁ……
西蔭が離脱するなら使徒の攻撃から野坂さんを庇って負傷退場がいいし
野坂さんにはその「野坂さん!危ない!!」って言って死ぬシーンを
今後32回くらい回想してほしいな~~~~!!!!(※ニコル・アマルフィ)